妖刀村正がトピックにありますが。

19世紀末、モモタローのお話が海外で紹介されるようになると、なぜかかれの刀がムラマサになっておったのです。ちなみにモモタローのステータスは「リトル・ローニン」。敵はオーガの王でありますから、いろいろ面白そうではあります。テキストは1897年韻文版から。 pic.twitter.com/L8z7B6e7ZX— 西洋魔術博物館 (@MuseeMagica) October 6, 2021

「貴様、その剣は……」

オーガの王が最後に見たのは、まぎれもない、あの忌まわしき剣であった。

「わかるか」

その男はニヤリと笑った。

穢らわしき餓鬼の首魁に突き立てた剣を、さらにえぐりこませて、苦しみもがく様をじっくりと堪能した。

「この剣のすさまじさ、『神君』のおわす地獄への土産話としてよろこばしかろうぞ」

「鬼畜──」

オーガは言い終わることなく、たちまち爆発四散!

爆炎を浴びてもなお何事もなかったように憮然として立つ男に、ドッグがかけよる。

「お美事にございます、殿……」

「たわけ」

男は一喝、ドッグはおびえ、尻尾を股に隠して平伏。

「しょせんは刃の錆にもならぬ畜生どもよ、どれだけ斬ろうといったい何の勲にやなる」

そしてドッグの背後に控えるバードとエイプに向かい、だが顔は天をあおいで。

「余のもっとも悔恨なるは、この剣で、あの『神君』の首を落とせなんだこと。きゃっつの驚きと苦しみにゆがむその首をこそ、目前で見たかったのだ。それを、おのれ、せめてあと半年早かったら──」

その男──かつて信繁と呼ばれ、死のまぎわにあってリトル・ローニン・モモタロー・ニンジャの憑依せらるる異能者は、徳川呪殺の魔剣・ムラマサブレードを天に突き立て、涙を目ににじませるのであった。

「徳川死すべし。幕府滅ぶべし。徳川の与力どもいっさい斃れるべし。慈悲はない」